忘れて、思い出して、知る


さっと資料に目を通した律は、資料をそのまま宙に回した。



「ま、まさかもう犯人がわかったとでも言うのか」



誠も含め、会議室にいる捜査員全員が、動揺を隠しきれていなかった。



「なるほど、これはたしかに簡単な事件だ」



宙も続いて犯人がわかったらしい。


そして宙は遥と栞に資料を見せる。



一課が頭を抱えている事件は、殺人事件だった。




事件が発生したのは、一ヶ月前の十月九日。


一人の女性が、自宅で遺体で発見された。


小林千明、二十三歳の社会人一年目だ。


彼女には、顔がとても似ている、仲のいい双子の妹を持つ。



左腹部と胸部、顔など数十ヶ所刺されていて、死因は出血性ショック死。



千明は殺害される直前に、家に入るところを見たと、近所で証言があったらしい。



容疑者は三人で、死亡推定時刻前後に彼女の家を出入りした人間だ。

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