人面瘡
☆☆☆

おつねという女はあたしたちと同じ街で生まれ育ったらしい。


おつねは街一番の商人の家に生まれ、裕福に暮らしていた。


「これ、この場所って……!」


「あぁ、間違いない」


雑誌にはとても古い地図が載っていて、おつねが生まれたとされる場所が記載されていた。


それは紛れもなく、あたしたちが今通っている相原高校と同じ場所だったのだ。


昔の写真では、そこにそびえたつ大きなお屋敷が写っていた。


1人娘のおつねは大切に育てられてきたが、1つだけ気にかかることがあった。


おつねの背中には生まれたころから大きなアザがあったのだ。


そのアザはどこか人の顔のように見えて、街の人々を脅かしていた。


今では生まれながらにアザを持っている人も多くいるが、昔の小さかった街では異質なものだった。


人々はあの背中のアザが動きだすのではないかと、噂を立て始めた。
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