人面瘡
「春子」


「一緒に行こうよ。2人で遅刻なら怖くないし」


そう言って笑う春子に、ホッと胸をなで下ろす。


あたしにはまだ友達がいた。


一番大切にしていたハズの友達はいなくなってしまったけれど、1人きりじゃないんだ。


「ねぇ、今日の沙和ってなんか様子おかしくない?」


歩きながら春子がそう聞いて来た。


「そ、そうかな?」


「そうだよ! 挨拶しても返事してくれなかったしさぁ」


「そうなんだ……」


あたしを無視するならまだわかるけれど、春子のことまで無視しているのか。


あたしはため息を吐き出した。


沙和が何を考えているのかわからなかった。


「春子は今日は見学組?」


更衣室に到着して、あたしはそう聞いた。
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