人面瘡
そう思うと、また涙が浮かんできてしまった。


どうにか涙を抑え込み、あたしは自分のブラウスのボタンに手をかけた。


1つずつ丁寧に外して行く。


雄生の視線が気になったので、すこし体の向きを変えた。


その時だった。


山に入ってすぐの場所に石碑が建てられているのが見えた。


あたしは手を止めてそれをジッと見つめる。


ここからの距離だと大きな文字しか読み取る事はできない。


でも、そこには確かに、おつねという3文字が書かれているのだ。


「雄生、あれ……」


石碑を指さしたその瞬間だった。


突如背中の顔が大声を出して笑い始めたのだ。


それは山の中に響き渡るような大きなこえで、鳥たちが逃げるように飛び立った。


あたしは両耳を塞ぎキツク目を閉じた。


至近距離から聞こえてくる声に脳がクラクラする。
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