人面瘡
あたしの心臓はドクンッと跳ねた。


「それなら、このおつねって人に関してもなにか知っていますか?」


あたしは緊張で喉がカラカラになるのを感じながらもそう聞いた。


「さぁ。俺は詳しくは知らない。おつねって人が住んでいた屋敷はこの山じゃなくて、あの学校があった場所だからな。おつねの石碑も学校に立てさせて欲しかったらしいけど、出来事が出来事だったから断られたんだ」


男性はブラシで力強く石碑を掃除していく。


詳しく知らないと言いながらも、こうして山の中へ石碑の掃除にやって来るのだ。


おつねになにがあったのかも知っているようだし、もっと話を聞きたかった。


あたしはゴクリと唾を飲みこみ、男性を見つめた。


「あたしたちはおつねって人がどうやって死んだのか知っています」


そう言うと、男性はチラリとあたしの顔を見て、また石碑に向き直った。


「それを知ったからあんたは泣きはらしたような顔をしてるのか」


熱心にブラシを動かしながらそう聞いて来た。
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