人面瘡
「アズサ」


雄生があたしの手を握りしめてくれる。


恥ずかしくて、苦しくて、悔しくて。


それでも、納得してもらうためには必要なことだった。


あたしは雄生の手を握り返す。


大丈夫。


これでなにもかも信じてもらえる。


「わかった。お前らの言葉を信じる」


しばらくすると男性はそう言ってあたしにブラウスをかけてくれた。


「すぐに信じてやれずに悪かったな」


「……いいえ」


「おつねの顔は今でも見つかってない。呪いはそういう類のものだろう?」


さっきまでとは打って変わって男性の口調はおだやかだった。


「知ってるんですか?」


あたしはブラウスを整えてからそう聞いた。
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