人面瘡
青年が指先でその涙をぬぐった。


「ごめん。俺の考えが甘かったんだ。規則的に埋めていけばきっとすぐに見つけてくれる。そう、思っていた」


規則ってなに!?


声がでないことがもどかしい。


「だけどおつね。お前の顔はすぐそばにある。お前の原点となったあの場所にある」


青年の声が徐々に小さくなっていき、やがて辺りは元の景色に戻っていた。


あたしは尻餅をついたままだけれど、おつねの墓は倒れてなんていなかった。


周囲はすでに暗くなっていて、まるでタイムスリップをしていたような気分だった。


「今の映像は……」


雄生が呟くようにそう言った。


「今のがおつねと、その恋人の男だ」


春子のお父さんがそう言った。


声が震えているようだったので振り向いてみると、腕で涙をぬぐっているところだった。


あたしはどうにか立ち上がり、「おつねさんの原点ってどこですか?」と、春子のお父さんに聞いたのだった。
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