人面瘡
「そっか。そうだよね」


あたしもつられて笑う。


雄生の手があたしから離れた。


まだ、もう少し一緒にいたいという気持ちが浮かんでくる。


けれどもう帰らなきゃ辺りは暗くなり始めていた。


「じゃあ、また明日ね」


そう言って雄生から離れようとしたその瞬間。


あたしの体は引き寄せられて、雄生の唇が自分の唇に押し当てられていたのだ。


あたしは驚いて言葉も出なかった。


唇が触れていたのはほんの一瞬で、次の瞬間には雄生は離れていた。


「じゃ、またな」


雄生は真っ赤な顔を俯かせてそう言い、そそくさとその場を離れたのだった。
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