人面瘡
☆☆☆

目が覚めた時、あたしは血の匂いに顔を顰めた。


部屋の電気を付けて確認してみると、部屋は血まみれのままだった。


あれからどのくらいの時間が経過しているのかわからなかったけれど、今日は月曜日だ。


このままぼーっとしているワケにはいかない。


足を庇いながら立ち上がった時、痛みが全くない事に気が付いた。


不思議に感じて視線を落とすと、昨日カッターで切り裂いたはずの右膝が、今は綺麗に塞がっているのだ。


「うそ……」


あたしは思わずそう呟いていた。


たった数時間ほどでこんなにきれいに傷がふさがるはずがない。


夢ではなかったと言う事は、目の前の血だまりが証明している。


あたしは混乱する頭で切り取った傷口の方を確認してみた。


それは炭のように黒くなり、人の顔があった部分もただの凹凸になっている。
< 86 / 204 >

この作品をシェア

pagetop