幸せを探して
その言葉にこもった、優しい意味が伝わったからだ。


「『きっとあの子は、私にも本当の気持ちを打ち明けてくれないと思うの。だけど、斎藤君ならあの子の気持ちに寄り添えるかもしれない』」


斎藤君が中村先生の声真似をする。


「『…彼女が苦しんでいたら、少しでもいいから寄り添ってあげて。そうしたらきっと、斎藤君は彼女の心の扉を開ける鍵になれるはずだから』って」


「…」


中村先生の優しさと、斎藤君の思いやりに包まれる。


「ありがとう…」


私は消え入りそうな声でお礼を言う。


余りに驚きすぎて、せっかく貰ったニゲラの花束を落としそうになっていた。


「川本が川本らしくなって、良かったよ」


前の私の事を知らないはずなのに、斎藤君はおどけてそう言ってみせる。


私は、涙目になりながら笑ってみせる。


そして、斎藤君は帰って行った。



斎藤君が私の家の前の道から完全に見えなくなり、私は手に持った二ゲラの花を眺めた。


青や白、紫などの綺麗な色の花が混ざっており、見ていて和むような雰囲気を醸し出している。


私は家に戻り、リビングには戻らずに自分の部屋へ直行した。


生前の美花の机に花束を置き、何となくの衝動で日記を取り出す。


ピンク色の表紙を開き、パラパラとページをめくりながら目的のページを探す。
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