イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
そして彼に恋をして早十年、いまだに初恋をこじらせたままでいる。
「うわー、それは恋に落ちるわ」
話を聞いたスミレさんが、納得したように呻った。
「まるで王子様みたいですね」
そばにいた店員さんにもうっとりとした表情で微笑まれ、照れくさくなってうつむいた。
「いや、王子様はいきなり殴りつけたりしないとは思うんですけどね……」
拓海は口は悪いし、容赦なく厳しいけど、本当は優しい。
その優しさに、私はいつも気持ちを揺さぶられるんだ。
「同級生の男子にからかわれたのはショックだったけど、窪田くんがいてよかったね」
スミレさんに優しくそう声を掛けられ、はにかみながら頷いた。
おしゃれをすることには少し抵抗が残ってしまったけど、それだけで済んだのは拓海のおかげだ。
あの時、拓海がいなかったら私は学校に通えなくなっていたかもしれない。
殴った理由を先生に問われても、拓海はただ『さわいでるのがうるさくてムカついたから』と繰り返すだけだった。