イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

そして彼に恋をして早十年、いまだに初恋をこじらせたままでいる。

「うわー、それは恋に落ちるわ」

話を聞いたスミレさんが、納得したように呻った。

「まるで王子様みたいですね」

そばにいた店員さんにもうっとりとした表情で微笑まれ、照れくさくなってうつむいた。

「いや、王子様はいきなり殴りつけたりしないとは思うんですけどね……」

拓海は口は悪いし、容赦なく厳しいけど、本当は優しい。
その優しさに、私はいつも気持ちを揺さぶられるんだ。

「同級生の男子にからかわれたのはショックだったけど、窪田くんがいてよかったね」

スミレさんに優しくそう声を掛けられ、はにかみながら頷いた。

おしゃれをすることには少し抵抗が残ってしまったけど、それだけで済んだのは拓海のおかげだ。

あの時、拓海がいなかったら私は学校に通えなくなっていたかもしれない。

殴った理由を先生に問われても、拓海はただ『さわいでるのがうるさくてムカついたから』と繰り返すだけだった。



 
< 111 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop