イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
明るく素敵な店内に足を踏み入れ美しい店員さんと話すだけで、ものすごく敷居が高いのに、商品名も用途もよくわからない化粧品を見ても、ただただ混乱するだけだ。
「大丈夫、私の友達がいるお店だから」
顔をこわばらせた私を、スミレさんが強引に引っ張っていく。
おしゃれなビルの一階にあるコスメのフロアで、美人なのにすこしも気取ったところがない気さくな美容部員さんに、ほぼすっぴんの顔をいじられる。
美容部員さんはこんなあか抜けない私を見下すことなく、ひとつひとつ丁寧に対応してくれた。
さすがスミレさんのお友達だ。
「特別な手入れをしてないのに、このもちもちのお肌はすごいですよ。うらやましいです」
ファンデーションを私の顔の上に伸ばしながらそう言われ、「ありがとうございます」と恐縮しながら肩をすぼめる。
なんだか今日だけで一生分のほめ言葉をもらった気がする。
ありがたいけど、落ち着かない。
でも落ち着かないくせに、すこし嬉しい。