イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
「佳奈ちゃんは童顔だから、あんまり濃いメイクは似合わなそうだよね」
私のとなりで頬杖をついてながめるスミレさんが楽しげに言う。
「そうだねー。ナチュラルメイクでいいけど、色白さんだから顔色が悪く見えないように、チークとリップはちゃんと入れてあげるといいと思います」
頷いて、まるで絵の具を広げたようなたくさんの色の中からピンク系のシャドウを選びだす。
「目元はピンク系のベージュにして、アイラインもピンクブラウンにしてみましょうか」
「アイライン……」
難しい顔でつぶやくと、スミレさんが首をかしげた。
「佳奈ちゃん、普段アイラインはひかない?」
「はい。不器用なので苦手で……」
試したことはあるけど、薄眼を開けたまぶたのふちに細い線を引くなんて高度な技を、不器用な私ができるはずもなく、よれよれのパンダみたいになってしまった。
「もしかして、マスカラも?」
質問に私が当然のように頷くと、「それは練習が必要ですね」と美容部員さんが苦笑いをする。