イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

もうすっかり見慣れた地味な顔に、黒縁の眼鏡。
まちがいなく自分のはずなのに、印象が違って見える。

薄い桃色に上気した頬に、うるうるのピンクのくちびる。
目元のシャドウと艶のあるマスカラのせいか目がいつもよりもずっと大きく見える気がする。

「わぁ……!」

思わず声をもらすと、ふたりは満足げに笑いあった。

「自分を綺麗にしてあげるって楽しいでしょ?」

スミレさんの言葉にうなずく。

「自分にはメイクもおしゃれも似合わないって思いこんでいたんですが、地味は地味なりに進化できるんだってはじめて知りました」
「もう、佳奈ちゃんは地味なんかじゃないのに」

私の言葉に呆れたように笑ったスミレさんが、私がかけている眼鏡を奪った。
とたんに目に映るものの輪郭がぼやけてしまう。

「佳奈ちゃん、眼鏡やめれば? 眼鏡をかけてなければ、地味な印象なんてなくなると思うよ」
「でも、裸眼じゃなにも見えません」


 
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