イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「この荷物で電車に乗るの、大変だよね。荷物持ちに信彦を呼ぼうか」

なんて言いながらスマホを取り出したスミレさんに、慌てて首を横に振る。

「荷物持ちに呼び出すなんて、悪いですよ」
「大丈夫。車で来てって言うから」

そんな用事で呼び出すなんて、迷惑じゃないだろうかとハラハラしていると、スミレさんがあっというまに電話で話をつける。

「すぐ来てくれるって」

当然のように言ったスミレさんに、感心してため息を吐き出した。

「なんだかスミレさんと川口さんって、本当にお似合いの恋人同士ですよね」
「そうかなぁ」
「いつも仲良しで、見ていてうらやましいです」

素直な感想をもらすと、スミレさんが優しく笑った。

「佳奈ちゃんにも、早くそういう恋人ができるといいね」

『恋人』という言葉に、思い浮かべてしまうのはやっぱり拓海の顔で、胸がきゅっと切なくなった。




 

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