イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「知ってて、諦められねぇの?」

信じられないといいたげな拓海の問いかけに、意味が分からず口ごもる。

「普通、彼女がいるって知ってたら諦めるだろ。なのに、そいつのために処女捨てようとしたり、料理の練習したり、服を買ったり。お前バカじゃねぇの?」

その言葉が、胸に突き刺さった。

たしかにその通りだ。私はバカだ。
いくら拓海を好きでいても、私には望みがないってわかりきってるのに。
諦めきれずにこうやってみっともなく無駄な悪あがきをして、本当にバカみたいだ。

ぐっと喉の奥から想いが込み上げてきて、必死に歯を食いしばる。

まばたきをすれば涙があふれてしまいそうで、眉をひそめまぶたに力をいれていると、大きなため息が聞こえた。

「そんな、泣きそうになるほどあいつのことが好きなのかよ」

私を見下ろした拓海が、なげやりだけど少しさみしそうな口調でそうぶつやく。




その時、ピンポーンと玄関からチャイムを押す音がした。



 
< 133 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop