イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
タクシーに乗ってやってきたのは拓海の部屋。
勇気をふりしぼった告白はなぜか答えをもらえぬまま、ふたりで微妙な空気で靴を脱ぐ。
リビングに入った拓海はひとりがけのソファに腰を下ろしたけれど、私はどうしていいのかわからなくて、なんとなくその前に正座をする。
そんな私を見下ろして、拓海がすかさずつっこんだ。
「なんで床に正座だよ」
「いや、なんかこの距離感がしっくりくる気がして」
わきあがる既視感になんだっけと首をかしげて、一か月前のことを思い出した。
そうだ、拓海に抱いてくださいとお願いした時も、こうやってソファに座る拓海の前に正座していたっけ。
あれから一か月。
同じような状況で、今度は告白を断れられるのを待っている。
「お前、会社の先輩が好きだって言ってたよな?」
そう問われ、裁判所で尋問されている被告人のような気分になってしまう。
この想いが通じるわけがないってことはもうわかってるから、詳しい理由は聞かずさっさと死刑判決を言い渡してくれればいいのに。