イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
自分でもわかってる。
拓海はかっこよくて仕事ができてみんなの注目を集めるような人で、地味でかわいげも面白みもない私とは、釣り合うどころか別次元の生物だ。
中学の時に恋をして、気づけば十年以上の片思い。
いい加減もう潮時だろう。
昨日の出来事は忘れて、気持ちに区切りをつけよう。
きっとそれが一番いい。
「佳奈ちゃん……」
複雑な表情でつぶやいたスミレさんに、ずれた眼鏡を押し上げながら無理やり笑顔を作って見せる。
川口さんもすこし気の毒そうな顔をしてから、ぎこちなく笑ってくれた。
「そっか」
長い腕を伸ばして、またわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれる。
「じゃあ、今度合コン開いてやるよ。佳奈ちゃんのために、いい男集めるから」
川口さんの言葉はありがたいけど、私のために合コンなんて参加してくれる男性に申し訳ない。
合コンのテーブルに私みたいな地味な眼鏡女がいたら、盛り下がること間違いなしだ。
だけどここでそう言うと、さらに気を使わせてしまいそうなので、「ありがとうございます」と頭を下げた。
すぐに拓海を忘れるのは難しいけど、叶わない恋を抱えたまま同じ場所をぐるぐると回り続けるのはもう疲れた。
いい加減、前を向いて一歩踏み出そう。
そう自分に言い聞かせた。