イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
立ち止まってしばらく窓を見上げていたけど、そこに拓海の影が現れるはずもない。
会社でみかけることはあっても、もう幼いころのように家族同然に接することはないんだ。
そう実感して少しさみしくなる。
バカだな、私は。
もう、この片想いをあきらめるって決意したのに。
隣の家に庭に止められたピカピカの補助輪付きの自転車。
それを横目で見ながら玄関に入ると、玄関に見慣れない靴が置いてあった。
男の人用の大きな靴。
お父さんにしては若くておしゃれなデザインだし、お客さんかな。そう思いながら靴を脱ぐ。
「ただいまー」
廊下を歩きリビングのドアを開いた私は、そのまま一瞬で凍り付いた。
「おかえり」
私が凍り付いた原因は、もぐもぐと口を動かしながらダイニングテーブルに座るその男だ。
「佳奈おかえりー。拓海くん、おかわりいる?」
「あ、おかわりほしいです」
たった今まで思い浮かべていた人物が、なぜか我が家の食卓で平然と食事をしている。