彼の甘い包囲網
ガッチリ絡められた指。

久々に触れる奏多の骨ばった大きな手。

伝わる温もりは私に現実を教えてくれる。

奏多は今、ここにいるのだと。



奏多はただ無言で私の手をひいて歩く。

先程不安定な気持ちで歩いた道を今は違う気持ちで歩く。



ソッと隣りに歩く奏多の横顔を盗み見る。

微かな月明かりと街頭に照らされた顔は相変わらず一分の隙もないくらいに整っていて。



きちんと整えられた髪に身体にピッタリとフィットしたスーツ姿に時間の経過を感じた。

そう、見まがうことなく大人の男性だ。

私はどうだろう。

奏多は私を見て、すぐにわかったと言った。

気付いてもらえたことはとても嬉しい。

会いたかったと言ってもらえたことも。


奏多に再会するまでに、少しの間でも、魅力的な大人の女性に成長していたかったのだけれど、そうはなれていないのか。

高揚していた気持ちが急激に萎む。

きっと奏多の周囲には綺麗な女性が見飽きるくらいにいるのだろうから。

私なんかでは歯がたたない、それはわかっているけれども。

思わず俯いた時、奏多が足を止めた。

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