彼の甘い包囲網
「……もう充分待った。
これ以上俺から離れるのは許さない。
……お前は俺のものだ
大学は卒業しただろ?」


久しぶりに聞く奏多の口癖のような台詞が嬉しい反面。

複雑な気持ちが襲う。


「……私は私のものだよ……」

「違う。
お前は全部、その髪の一本まで俺のものだ」


顔を上げた奏多が私の髪を手ですきながら言い切る。

ねえ。

奏多、何でそんなこと言うの。



「……奏多、何で……何で、いつもそんなこと言うの……。
何でそんな期待させるようなことばっかり……。
奏多が何を考えているのかわかんないよ……」


奏多がどんな気持ちでも私が奏多を『好き』な気持ちはもう抗いようのない事実なのに。

奏多の言葉が辛い。

泣き言のように言って俯く私の頬を奏多が両手で挟んで無理矢理、視線を合わせた。


「……何で、って?
当たり前だろ、お前以上に大切なものなんてない。
お前のことしか考えていない」

真剣な瞳が私を射抜く。

「だからっ……!
何でそんなこと……!
お願いだからやめて、私ばっかり振り回されて、私ばっかり色々考えて、好きで……!
ここだって、他の女性が来たんじゃ……!」

カアッとなって半ば泣き叫びながら話す私は。

とんでもないことを口にしたことに後になって気付いた。
< 120 / 197 >

この作品をシェア

pagetop