彼の甘い包囲網
「佐伯さんは実家の料理を作ってくれている人」

奏多は簡潔に教えてくれた。

「じ、実家って?!」

吃驚して声が裏返る。

只の酔い潰れが何やら大事になっている……。

色々な人を巻きこんでしまって本当に申し訳ない。

しかも実家って!

天下の蜂谷家を私の、こんなことで!

何だかもうどうしていいかわからない。

泣きそうな顔をしている私の頭を奏多はポン、と撫でた。


「……楓のことは前々から両親に話してあるから気にするな。
むしろ接点を持てて喜んでるよ」

「そうよ!
二人とも楓ちゃんに会いたがっていたわ。
酔い潰れたなら実家に来てくれたら良かったのにって母様に言われたくらいよ。
今度私と行きましょ!」

「何でお前となんだよ、おかしいだろ!
俺が行く!」

話がおかしい。

酔い潰れて自宅に戻るならまだしも奏多の実家なんて恐れ多くて敷居を跨げる気がしない。

しかも私のことを話しているなんて……!

酔い潰れていることまでバレていて醜態を晒している。

どう思われているのだろうか……。

危機管理のない自己管理もできない社会人……とか。


グルグルと不安ばかりが頭を駆け巡り、折角の素晴らしい朝食を味わうことができなかった。

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