彼の甘い包囲網
結局。


週末はほぼ奏多と一緒に過ごしていた。

何度か柊兄から連絡があったけれど。

奏多は私を金曜日の夜に迎えに行くこと、それから自宅に泊めることをきちんと柊兄に伝えていたらしい。

柊兄は渋っていたらしいけれど、そこは奏多。

無理矢理、押しきったらしい。

その陰に充希くんの力が働いたみたいだけど、その辺りは追求しなかった。

週明けの仕事には奏多に説き伏せられ、ここから出勤することになってしまった。


山のような買い物をした荷物は翌日に届けられ、整理ついで、と言って奏多がクローゼットに私のスペースを用意してくれて、他の部屋を今更ながら案内してくれた。


玄関を入ってすぐ正面にトイレ、洗面所がある。

玄関の右側に小さな納戸スペース、洋室が二つ。

一つは私が寝落ちした奏多の寝室。

廊下の突き当たりには広々としたリビング。


朝食をとったL字型キッチンにも充分なスペースがある。

大きな窓からは、見事な景色が見える。

リビングのすぐ横は少しだけ段差があり、もうひとつ洋室がある。

奏多が書斎代りに使っているという。

家具は少なく、無駄な装飾もない。

白い壁に白いフローリング、高い天井。

一人で住むには広すぎるくらいのシンプルで清潔な部屋だ。

掃除、洗濯は一応自身でも出来るらしいけれど、週に一回か二回、千春さんと一緒に専門業者さんにお願いしているらしい。


本当に広いよね、と感嘆しながら言うと。

俺が寂しそうで可哀想だろ、と言われて。

早く籍を入れて、一緒に暮らそうと懇願され、墓穴を掘った。

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