彼の甘い包囲網
「いらっしゃい、楓ちゃん!」
フワリ、花が綻ぶような笑顔。
開け放たれた扉から感じる温かい空気。
変わらない千春さんの様子に安堵した。
「柊くん、楓ちゃんは任せて。
奏多にさっさと片をつけなさいって言っておいて」
後半はグッと低い声で呟く千春さん。
奏多の姉だけあって威圧感が凄い。
柊兄は千春さんに抱き締められている私をチラリとみて、無言で頭を下げて踵を返した。
真っ白なモコモコした素材の踝まであるルームワンピース
を着た千春さんは素顔もやっぱりシミ一つない輝いた肌をしている。
「暗いことは考えずに。
お風呂の準備も出来ているからゆっくり温まってきて!
それからお茶会でもしましょ?」
優しい笑顔に小さく頷いた。
フワフワのバスタオルと何故かいつも完璧に揃えられている新品の化粧品類と着替え一式を渡されて、私はバスルームに向かった。
「着替えた服はクリーニングに出すから洗面所に置いておいてね」
ドア越しに聞こえる千春さんの声に小さく返事を返して、私は熱いシャワーを浴びた。
バスタブの乳白色のお湯からは甘い花の香りがする。
チャプン、と肩まで浸かると、混乱してグチャグチャになっていた頭と心が解れていく。
気持ちが少しずつ落ち着いてくる。
奏多の顔が見たくて、声が聞きたかった。
ねえ、奏多。
今、何しているの?
楓、って名前を呼んで、抱き締めてよ。
私は膝をギュッと抱き締めて不安を追い払おうと目を瞑った。
フワリ、花が綻ぶような笑顔。
開け放たれた扉から感じる温かい空気。
変わらない千春さんの様子に安堵した。
「柊くん、楓ちゃんは任せて。
奏多にさっさと片をつけなさいって言っておいて」
後半はグッと低い声で呟く千春さん。
奏多の姉だけあって威圧感が凄い。
柊兄は千春さんに抱き締められている私をチラリとみて、無言で頭を下げて踵を返した。
真っ白なモコモコした素材の踝まであるルームワンピース
を着た千春さんは素顔もやっぱりシミ一つない輝いた肌をしている。
「暗いことは考えずに。
お風呂の準備も出来ているからゆっくり温まってきて!
それからお茶会でもしましょ?」
優しい笑顔に小さく頷いた。
フワフワのバスタオルと何故かいつも完璧に揃えられている新品の化粧品類と着替え一式を渡されて、私はバスルームに向かった。
「着替えた服はクリーニングに出すから洗面所に置いておいてね」
ドア越しに聞こえる千春さんの声に小さく返事を返して、私は熱いシャワーを浴びた。
バスタブの乳白色のお湯からは甘い花の香りがする。
チャプン、と肩まで浸かると、混乱してグチャグチャになっていた頭と心が解れていく。
気持ちが少しずつ落ち着いてくる。
奏多の顔が見たくて、声が聞きたかった。
ねえ、奏多。
今、何しているの?
楓、って名前を呼んで、抱き締めてよ。
私は膝をギュッと抱き締めて不安を追い払おうと目を瞑った。