彼の甘い包囲網
「うん。
大好きだよ」


私を見下ろす綺麗な紅茶色の瞳を真っ直ぐに見つめてハッキリ答える。

クシャリと歪む奏多の表情。

「奏多。
私、どんな奏多も大好きだよ。
奏多はいつも私を見てくれていたよね。
不安で泣いてしまう弱い私も、癇癪を起こしてしまう私も。
全部の私を好きだと言ってくれた。
私も奏多の全部が大好きなの。
弱っている奏多も、悩んでいる奏多も。
カッコ悪いなんて思わないから、全部を見せてほしい。
……私では役不足かもしれないけれど、奏多が辛い時、しんどい時は頼ってもらえるような、甘えてもらえるようなそんな存在になりたいの」


そうっと奏多の両頬を私の両手で包む。

私とは違う高い体温。

男性なのにスベスベした綺麗な肌。

綺麗すぎる顔立ち。

最初はその凄まじく綺麗な容貌に目を奪われた。

だけど、それだけではなくて。

少しずつ奏多の中身を人間性を知って。

どうしようもなく惹かれていた。


「……楓。
ありがとう……」


奏多の声が震えている、と感じたのは気のせいかもしれない。

奏多は俯きながらコツン、と額を合わせてしっかりと私の両手の上から手を重ねてくれた。


ああ、私は。

この人を守りたい。

何でも器用にできてしまう人だけれど。

弱さや疲れが見えにくい人だけれど。

そんな人だからこそ。

せめて、二人でいる時に。

この多忙な人が心を休めることが出来るような存在になりたいと心から思った。


……そんな気持ちを愛だというのかもしれない。


初めて奏多の婚約者という立場の入口に立てた気がした。


お互いに顔を見合わせて私はゆっくりと瞳を閉じた。

奏多の優しい唇がそっと私に触れた。

触れた唇から奏多の気持ちが伝わって、温かくて涙が滲んだ。
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