彼の甘い包囲網
「柊、女の子に何してんの」
その刹那。
フワッとシトラスの優しい香りが漂った。
周囲の空気が瞬時に変わる。
圧倒的な存在感。
視界に太陽の光のような明るい色が広がる。
現れた、完璧な王子様。
細身の身体に少し着崩した制服を身に付けて。
紺色のブレザー、緩められたネクタイからのぞく喉仏が同級生とは違う色気を感じる。
切れ長のクッキリとした二重瞼。
輝く紅茶色の瞳にスッと通った鼻筋。
綺麗な弧を描く唇。
男性とは思えない陶器のようにキメ細やかな肌。
甘い雰囲気の漂う凄まじく綺麗な容貌に。
目を奪われた。
これが蜂谷奏多との出会いだった。
「奏多、大丈夫。
こいつ、妹」
シレっと言い放つ柊兄を再び睨み付ける私。
「……妹?
ああ、そう。
それでもこの荷物はダメだろ。
女の子だし」
そう言ってヒョイと私の腕から荷物を取り上げて柊兄に放り投げ、私の剥き出しの腕をソッと掴んだ。
「……赤くなってる、大丈夫?」
ジッと大きな瞳に見つめられて、ジワジワと体温が上がる。
触れられた部分が熱い。
返事をしたいのに金縛りにあったみたいに声が出ない。
「大丈夫だって。
楓はそんなにヤワじゃないから」
「柊に聞いてない」
バッサリ言い捨てて奏多は再び尋ねた。
「大丈夫?」
コクンと私が頷くと奏多は安心したような微笑みを見せた。
「奏多くん、そろそろ行こうよ?」
同じ制服の女の子が上目遣いで奏多に話しかけた。
フワリと甘い香りが漂う。
綺麗な黒に近い焦げ茶色の長い髪をゆるく巻いた、目鼻立ちのハッキリした綺麗な女の子だった。
短めの制服のスカートから覗く足はスラリと細い。
奏多越しに私を見る彼女の目に宿るあからさまな牽制。
「じゃあ、僕と先に行こうか」
奏多の少し後ろにいた、これまた秀麗な顔立ちの男子高校生が初めて口を開いた。
女の子は拗ねたように、奏多を見ていたけれど。
長身に、軽くウェーブがかかった焦げ茶色の髪の、見目麗しい男子高校生、上條充希に丁寧に手を取られて、悪い気はしないらしく。
その証拠に頬が赤く染まっていた。
「柊を手伝うから充希と先に行ってくれる?」
奏多は女の子に極上の笑みを浮かべて言った。
女の子は何か言いたそうにしていたけれど。
充希くんにエスコートされ、近くに停まっていた黒塗りの車に乗り込んだ。
その刹那。
フワッとシトラスの優しい香りが漂った。
周囲の空気が瞬時に変わる。
圧倒的な存在感。
視界に太陽の光のような明るい色が広がる。
現れた、完璧な王子様。
細身の身体に少し着崩した制服を身に付けて。
紺色のブレザー、緩められたネクタイからのぞく喉仏が同級生とは違う色気を感じる。
切れ長のクッキリとした二重瞼。
輝く紅茶色の瞳にスッと通った鼻筋。
綺麗な弧を描く唇。
男性とは思えない陶器のようにキメ細やかな肌。
甘い雰囲気の漂う凄まじく綺麗な容貌に。
目を奪われた。
これが蜂谷奏多との出会いだった。
「奏多、大丈夫。
こいつ、妹」
シレっと言い放つ柊兄を再び睨み付ける私。
「……妹?
ああ、そう。
それでもこの荷物はダメだろ。
女の子だし」
そう言ってヒョイと私の腕から荷物を取り上げて柊兄に放り投げ、私の剥き出しの腕をソッと掴んだ。
「……赤くなってる、大丈夫?」
ジッと大きな瞳に見つめられて、ジワジワと体温が上がる。
触れられた部分が熱い。
返事をしたいのに金縛りにあったみたいに声が出ない。
「大丈夫だって。
楓はそんなにヤワじゃないから」
「柊に聞いてない」
バッサリ言い捨てて奏多は再び尋ねた。
「大丈夫?」
コクンと私が頷くと奏多は安心したような微笑みを見せた。
「奏多くん、そろそろ行こうよ?」
同じ制服の女の子が上目遣いで奏多に話しかけた。
フワリと甘い香りが漂う。
綺麗な黒に近い焦げ茶色の長い髪をゆるく巻いた、目鼻立ちのハッキリした綺麗な女の子だった。
短めの制服のスカートから覗く足はスラリと細い。
奏多越しに私を見る彼女の目に宿るあからさまな牽制。
「じゃあ、僕と先に行こうか」
奏多の少し後ろにいた、これまた秀麗な顔立ちの男子高校生が初めて口を開いた。
女の子は拗ねたように、奏多を見ていたけれど。
長身に、軽くウェーブがかかった焦げ茶色の髪の、見目麗しい男子高校生、上條充希に丁寧に手を取られて、悪い気はしないらしく。
その証拠に頬が赤く染まっていた。
「柊を手伝うから充希と先に行ってくれる?」
奏多は女の子に極上の笑みを浮かべて言った。
女の子は何か言いたそうにしていたけれど。
充希くんにエスコートされ、近くに停まっていた黒塗りの車に乗り込んだ。