彼の甘い包囲網
突然のキスに瞠目する私にお構いなしに。

奏多は長い睫毛を伏せる。


私の呼吸を奪うような荒々しいキスは。

信号が青に変わるまでの、僅かな時。


ドッドッド、と。

心臓の音が身体中に響く。

瞬時に真っ赤になった頬が熱い。


私の顎から手を離して。

平然と運転する奏多は。

チラリと私に鋭い視線を送って。


「……俺はお前しか要らない」


至極不機嫌な低音で呟いた。


「……何でキス……!」



その言葉を口にする前に。

再び唇を啄まれた。

さっきとは違う、奏多の唇の柔らかさを感じるキス。


「くだらないことを言うお前が悪い」


ニッと口角を上げて私を見返す奏多がとても腹立たしい。

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