彼の甘い包囲網
冷静さの違いは年齢差なのか。

奏多の落ち着いた態度に、無性に腹立たしさが込み上げた。

イライラがおさまらない。


トン、と私の頭の上に奏多が額を乗せた。



「……ごめん」

「……」

「連絡しなくて、ごめん」



殊勝な奏多の態度にほんの少し気持ちが揺らぐ。

「……どうして連絡、くれなかったの……?」

「楓を拐いたくなるから。
俺の腕の中に閉じ込めて何処にも出したくなくなるから」


ボボッと顔が火照る。

一気に体温が上がる。



「……うそ……ばっか」



喉がカラカラに乾く。

背中を抱き締められていて良かった。

こんな真っ赤な恥ずかしい顔、見せられない。



「……嘘じゃない。
……毎日、毎日、お前のことを考えていたよ。
お前に会いたくて、触れたくて、抱き締めたくて堪らなかった」



切ない奏多の声が響く。

心臓が狂ったように走り出す。

……息が止まりそうだ。

「い、意味が……わ、わからない」

クス、と奏多が頭上で笑んだのがわかる。

「お前は俺から逃げられないってことだよ。
お前が誰にも奪われないように、急いで帰ることだけを四年間考えていた。
何度も言ってるだろ?
俺はお前以外の女は要らないし、お前だけが大事なんだよ。
……お前は俺のものだ」

柔らかい低い声。


ああ、もう。

何処までも奏多は私を振り回す。

頭に血が上って何にも考えられない。

心臓の音がうるさい。


「……勝手に決めないで」

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