彼の甘い包囲網
柊兄が渋々、荷物を持って私と自宅に戻った、その翌日から。

奏多をよく見かけるようになった。



暫くして。

柊兄から奏多の話を聞いた。

奏多の父親はあの蜂谷グループの社長だという。

蜂谷グループは不動産事業、ホテル事業等を展開している国内屈指の大企業だ。


その傘下の子会社は多岐に渡る。

奏多は二つ歳上の姉の千春と二人姉弟。

彼は小さな頃から蜂谷グループの後継者としての教育を受けてきたという。



本来は兄が通っているような普通の私立高校に通うこともないのだけれど。

高校生活くらいは普通に過ごしたいと主張して通っているそうだ。

とはいえ、自由な時間はあまりなく引き換えにしたものも多いと兄が話してくれた。


兄の通う高校は偏差値が高く、特に特進クラスは私が逆立ちしても入学できない。

兄は性格は雑なのだが、小さな頃から何故か勉強はできる。

ちなみに奏多と充希くん、兄は特進クラスに属している。

奏多は学年トップの成績らしい。

基本的に奏多は自宅からの送迎で通学し、どんな時も大抵は充希くんが秘書のように奏多と一緒にいるという。
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