彼の甘い包囲網
奏多は高校卒業と同時にアメリカへの留学も決まっているという。

現地で大学に入学し、経営学等を学ぶらしい。

将来の道筋まで決まっている奏多は、やはり住む世界が違う人なのだと改めて認識する。

何の苦労もなさそうな、誰よりも恵まれた容姿のチャラい人かと思ったのに。


「……お前、ただの金持ちのチャラい奴とか思ってなかったか、今?」


意外に鋭い兄の指摘にギクリとしながら首をブンブンと横に振る。


「付き合いが浅い俺が言うのも何だけどな。
アイツは自分の立場や立ち位置を誰よりも理解している。
女に本気にはならないし、来るもの拒まず去るもの追わず、だ」


その時の私は、自分とは関係ない世界の話だと思って聞いていた。

そんな人がいるんだ、と世界観も考え方も違う、まるで異世界人のように思っていた。


まさかこの先、自分自身が奏多と関わることになるなんて思わずに。
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