彼の甘い包囲網
柊兄に会いに来るついでだったり。

私が好きなケーキを持ってきてくれたり。

駅まで一緒に歩いたり。


奏多と私は顔を合わせて話す機会が増えた。


クリスマスにはイルミネーションを見に行こうと誘われ、お正月には初詣にも出掛けた。

二人きりではなく、柊兄や充希くん、紗也がいつも一緒だったけれど。


「……すごいわね、一途というか何と言うか」


ある日、紗也がポツリと言った。

三学期に入って、寒さが日増しに厳しくなってきた。

雪が散らつく日もあり、インフルエンザが流行っているとニュースで連日報道されている。


私達は近所の図書館で数学の小テストの勉強をしていた。


「何の話?」


数学の問題に四苦八苦していた私はテキストから目を離さず、小声で返事をする。


「私の親友は愛されてるなあって話よ」

「何、それ?
解き方わかったなら、教えてよ」

「……鈍いわね、相変わらず」


紗也の顔をチラリと見る。


「何が?」

「だから蜂谷さんのことよ。
楓は好かれていると思うんだけど」

「そんなワケないでしょ」

アッサリ否定する。
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