彼の甘い包囲網
「……奏多と私って何なんだろうね」

「……それを俺に聞くなよ。
ってか、お前がまだそこに悩んでたことにビックリするけどな。
アイツも大変だな……」

髪をタオルでガシガシと拭きながら兄は呆れたように言った。

「……何で」

ジトっと兄を睨むと。

柊兄はやれやれ、と言うように肩を竦めた。

「奏多の気持ちは俺からしたら駄々もれだし。
何を悩んでるのか俺にはよくわかんねえけどな。
悩むくらいなら本人に聞けばいいだろ」

「そんな単純なことじゃないもん……」

「お前が難しく考えすぎなんだよ」


ぽん、と私の頭を撫でて兄は腰を上げた。


「まあ、ゆっくり考えろ。
奏多には転勤話だけ俺が伝えとく」


タオルを肩にかけて、兄は部屋を出ていった。
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