彼の甘い包囲網
「……だっておかしくない?
あの蜂谷さんだよ?
可愛くて綺麗な女子が、わんさか寄ってくるあの美形ぶり!
蜂谷さんって忙しい人だよね?
会社関連の催しや式典にだって出てるし。
そんな人が何でワザワザ普通の高校生と過ごすの?
あ、ちなみに私は楓の警戒心を煽らないための完全なるオマケだってわかってるけど」

「……紗也」

「恐ろしいくらいにモテる蜂谷さんなのよ?
彼女はおろか、一度だけでもデートしたいって女子がどれだけいるかわかってる?」

私の調査力を舐めないでよ、と紗也は胸を張る。

私は小さく溜め息を吐いた。

「……でも奏多は奏多だよ。
一緒にいたら、意外と普通の男子高生だよ?」

「その見解がまずスゴいんだけどね、楓は。
とにかく、私が言いたいのは自信をもちなさいってこと」

「……何の?」

「ハイハイ、そう言うと思った。
じゃ、試してみる?」


紗也は私を引っ張って、廊下でスマートフォンを取り出す。


「あ、柘?
今から部活だよね?
ううん、私は帰るんだけど。
そう、今、図書館。
楓はまだ、ここで勉強するから部活帰りに寄って、家に送ってあげてくれない?
ほら、この辺りって真っ暗でしょ?」

「紗也?!」
< 8 / 197 >

この作品をシェア

pagetop