彼の甘い包囲網
奏多に初めて出会った時。

何て綺麗な人だろうと思った。

秀麗な顔立ち。

長い足に男性とは思えない程、スベスベの肌。

まるで物語の王子様のようだった。


だけど。


話をして。

一緒の時間を過ごして。

それだけではないことを知った。

子どものように拗ねるところ。

過剰なくらい心配性なところ。

甘いものが苦手なところ。



奏多をたくさん知った。



いつも私が願う前に。

寂しさを感じる前に。

傍にいて笑いかけてくれた。

兄とは違う男性。



異性と付き合ったこともない、恋を知らない私には。

この気持ちが恋なのか確信は持てない。

だけど、奏多のことを考えない日はなくて。

会えないと気になって。

声を聞くと顔が見たくなって。

笑顔を向けられると胸が締め付けられて。

些細な一言に振り回される。

他の男性には抱かない、奏多にだけ抱くこの気持ち。




……私は奏多に恋をしている。
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