放課後○○倶楽部

「な、何ですか、これっ」
「さあ、ね。でも……この部屋に隠しカメラがあるみたいだね」
「何を呑気な事を言ってるんですか、先輩っ」

 俺を見上げて子犬のようキャンキャン吼えていた律子ちゃんだったけど、今がどんな体勢になっているのかに気付いたらしく、見る間に顔を真っ赤にして「おにょおっ」と奇声を発していた。

 傍から見れば完全に俺が律子ちゃんに覆い被さって襲っているような格好をしているが、別にそんな感情は持っていない。あくまで緊急事態のために仕方なくこうして保護をしているわけだ。

 決していやらしい気持ちはない……本当です。

「さて、律子ちゃん……」
「な、何でしゃっろか? ……あ、いや、何で――ひゃうっ」

 動揺しすぎの律子ちゃんは力いっぱい舌を噛んだようで、とても痛そうに顔をしかめていた。

 少しの間律子ちゃんと遊んでいた気もするのだけど、そんな暇はないので今は我慢しよう。

 それにしてもコハルのヤツ、少し変わったようだな。

 一年前まではほとんど感情を表に出さない子だったのに、今は怒鳴って声を荒げているし、やけに感情的な子に進化……いや、成長したものだ。まあ、何にしてもこっちの方が人間味があって面白いというものだが、ちょっと対処に困ってしまうな。

 でも、今のコハルならこの手が通用するかも知れない――。

「俺に考えがあるんだ。ちょっと耳貸して」
「オ、オプションでネコミミが出来ますけどっ」

 ちょっと顔を近づけただけで途端にパニック状態になった律子ちゃんは、面白い事を口走っている。


 ……遊びたい。


 今の律子ちゃんで遊んだらとても楽しそうなのだが我慢だ。しかし、ここまでパニックになって何を期待しているのだろうかね。

「律子ちゃん……」
「ちょっ、あ、あの……先輩、私――あっ……こ、心の準備がっ」
「いいんだよ。身体の力を抜いて、リラックスして」

 目の前――五センチほどにある律子ちゃんの顔。近過ぎるので少し寄り目になっている律子ちゃん。

 その顔が面白く、それを堪能しようかと思っていたが――
「何やってんの、トモ兄ちゃんっ」
 盛大な金属音を響かせ、部屋全体を揺らし、壁が壊れそうな勢いで扉が開いていた。
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