放課後○○倶楽部
第一〇話:探しものは見つからないですね。
 部屋の中は以外にも整理整頓されており、ほとんど塵など落ちてなかった。

「……何か見つかった?」
「うんしょ……え? あっ、はにゃっ」

 奇声を発して盛大な音がしたのでうしろを振り返ると、目の前にピンクのパンツがあった。

 前転をしている途中でお尻を上げたまま止まったような体勢で完全に丸見えになっているのだが、何をしていたらこうなるのだろうか?

 さすが律子ちゃんの天然パワーは俺の想像を遥かに越えるものだ。

 今日はいつにも増してパンツを披露してくれる日だな。一般男子生徒諸君がここにいたら泣いて喜ぶのだろうけど、俺は耐性が出来てしまったようで素直には喜べなくなっていた。でも、男なので見てしまうのは仕方ないのだよ。

「律子ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫で――きゃあっ、きゃーっ」

 頭を押さえて目を廻していた律子ちゃんは俺を見上げて自分がどんな体勢になっているのか一瞬分からなかったようだが、自分の目に自分のパンツが飛び込んでいる事に気付いたらしく、大きな悲鳴を上げて前転をしながら壁に突っ込んでいった。


 ……器用だな。


 壁の前で目を廻している律子ちゃんを横目に、ここに来てどれほどの時間が経ったのかを考えていた。お腹の空き具合と先ほどの部長達との会話でかなりの時間が経過しているのは判断が取れる。

「パスワードのヒントって言われても何も…………ん?」

 不意に視界の隅に何かが舞うのが見えてそちらに向くと、一枚の紙が落ちていた。

 それを拾い上げてみると、紙にはミミズが這ったような字で――
 『言葉の形を変え、文字の意味も変え、その思いを日本ではなくローマで叫び、私の耳に聞かせて欲しい』
 と、意味不明な文章が書かれていた。

「はう……目がチカチカします」

 そこに頭を振って律子ちゃんが帰還し、不思議そうに俺の持っている紙を見つめているので手渡すと、暫く紙と睨めっこをしたあとで顔を真っ赤にして俺の顔を見つめていた。
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