俺様外科医に求婚されました
ようやく涙も止まり、やっと落ち着きを取り戻せたのは風呂場に入ってから一時間以上も過ぎてからだった。
濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に戻ると、肌を刺すような冷え切った空気にブルっと身震いがした。
この部屋は、冬場はとても冷える。底冷えもひどい。
足裏から伝わるフローリングの冷たさに、私は慌ててエアコンの電源を入れた。
そしてソファに放り投げたままのコートをハンガーにかけると、冷蔵庫から缶ビールを取り出してドサッとソファに腰を下ろした。
まだ暖まらない冷たい空気に寒さを感じながらも、私はひとまず「ふぅ…」と、一息ついた。
右手に持っていた缶ビールのプルタブを慣れた手つきで片手だけで器用に開け、それをゴクゴクと喉に流し込んでいく。
口内に広がる程よい苦味。
シュワっとした喉越しは、風呂上がりには最高だ。
「…うま」
独り言を呟いた私は、さらに缶ビールを口にして。
「はぁっ…疲れた」
そして一人きりの部屋で、また独り言を呟いた。