俺様外科医に求婚されました



一瞬で、車内の空気はシーンと静まり返った。

掴まれた手に視線を落とした私は、心臓がバクバクと速くなっていくのを感じながら大和先生に目を向ける。


「どうか…しましたか?」

「うん」


目が合ったまま、大和先生は頷いた。


「えっ、どうしたんですか?」

「…わからない」


真っ直ぐな瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。

わからないだなんて返されても…この静かな雰囲気と掴まれた手から伝わる体温に…落ち着いてなんていられない。


「大和先生?」

「いや、ずっと言おうと思ってたんだけど」


神妙な面持ちと真剣な声。
何を言われるのかと、思わず息を飲んだ。


「俺は理香子って呼んでるのに」


えっ!?


「俺はまだ一度も呼ばれてないだろ。プライベートでは名前で呼んでくれって言ってたのに」


はっ!?


何を言い出すのかと身構えていたのに、名前で呼ぶ話?


「びっくりするじゃないですか、あんまり真面目な顔するから何かもっと真面目な話かと」

「いや、真面目な話だろ。四人で飯食った帰りに、名前で呼び合う約束をしたはずだ」

「約束って…あれは勝手に大和先生が」

「大和先生じゃない。今は名前で呼べ」


や、いきなりですか。
呼べと言われて呼ぶんですか。
それも、今この状況で?


< 143 / 250 >

この作品をシェア

pagetop