俺様外科医に求婚されました
母は、若年性認知症という病気だった。
発症した時期はいつからなのかハッキリとはわからないけれど、正確に発覚したのは三年ほど前だ。
最初は軽い物忘れ程度で、まさか病気だなんて気付かなかった。
醤油をきらしたから買いに行くと言って出かけたのに、何を買いにきたんだっけ?と、電話がかかってきたり。
私が録画を頼んでおいたテレビ番組が録画されていなかったり。
元々結構きっちりしている性格だったせいか、そんな忘れっぽさが目立つようになると、母も年をとってきたんだなぁなんて。
最初はずっとただの老化の一種だと思っていた。
でも、建設会社で長年経理事務の仕事していた母の不自然な様子に誰よりも早く気が付いていたのは、職場の友人である田村さんだった。
八歳の頃に父を病気で亡くしてからは、私はずっと母と二人暮しだった。
田村さんと母は同世代で、職場でも仲が良かったらしく、幼い頃から田村さん家族とは家族ぐるみでよく遊びに行ったりするような親しい関係だった。
そんな長年の付き合いの田村さんが私に直接連絡をしてきたのは、私が成人式を終えた数日後で。
寒い、冬の夜だった。
今から外で二人だけで会えないかと言われ、何かあったのかと直感で感じた私は、母には内緒で友達と出かけてくると言って家を出た。