俺様外科医に求婚されました
「…そんな、まさか」
賑やかな夜のファミレスだった。
楽しそうに交わす会話があちらこちらから聞こえてくるのに。
田村さんの話を聞きながら、私は呆然となったのを今でもよく覚えている。
お母さん、家での様子は変じゃない?とか。ここ一年くらいは仕事でミスがすごく多いとか。
職場ではそれが原因で、最近はちょっと孤立しているとか。
とにかく驚いた。
経理事務は会社のお金を管理する大事な部門だ。
小さいミスも許されない仕事なのよ、と母は昔からよく口にしていた気がする。
だからこそ、そんなことあるわけがないと。
ウソだと、最初は信じられなかった。
でも、田村さんの話はそれだけでは終わらなくて。
ここ数カ月の話ならまだしも、一年以上前からの出来事を遡って話されると、不安の波に飲み込まれた。
「勘違いかもしれないけど、ずっと気になっていたし…一度大きな病院で診てもらった方がいいわ」
そしてそう言われた瞬間、途端に怖くなって震える手をぎゅっと握りしめた。
だってまだ、四十九歳だよ?
絶対に何かの間違いだ。
そう思いたい自分がいるのに、もしかしたら…とか、そういえば近頃おかしいことは多かったとか。
脳裏によぎる数々の出来事を考えると、いろんな思いが交錯した。
それでも私は、認めたくなかった。
「もしも認知症だったら、大変だから」
田村さんの言葉を、信じたくなかった。
だから私は、母を連れて行ったのだ。
その翌日にすぐに、総合病院に行った。