俺様外科医に求婚されました



「う…ん」


寝返りを打った母の声に、ハッと我に返った。


静かに立ち上がった私は上着を脱いで服を着替えると、コットンでメイクだけをサッと落とした。

深夜のこの時間だ。物音を立てるには気がひけるし、お風呂には入らない方がいいだろう。
さっきの伯母さんとのやり取りを思い返すと、なんだか気が重かった。


母の弟である正人(まさと)伯父さんのこの家に居候させてもらうようになって、もう二年と少しが経つ。

伯父さんは、伯母さん、小春ちゃんという私よりも四つ年下の娘がいる三人家族だった。


そんな三人が住むこの家にお世話になることになったのは、母が仕事をクビになったことが始まりで。

祖父母は共にすでに亡くなっていたこともあり、私はまだ学生の身で。
身内といえば、伯父さんくらいしか頼るあてはなかった。


正人伯父さんは、本当によくしてくれた。

若年性認知症という普通の認知症よりも進行速度の早い認知症を患ってしまった母のことはもちろん、姪である私のことも親身になって助けてくれた。

まだ学生だった私の学費も、伯父さんが援助してくれたからこそ無事に卒業するまでに至ったし、私も負担を減らせるようにバイトをして、その稼ぎはほとんど全て生活費に当ててもらえるようにやってきた。

それは、看護助手として病院で働くようになった今も変わらない。

< 158 / 250 >

この作品をシェア

pagetop