俺様外科医に求婚されました
部屋の掛け時計にふと目を向けると、時刻はもう深夜の二時を過ぎていた。
夕方から母を探し、見つかったと連絡を受けてから病院に向かって。
気が付けば、こんな時間だ。
「あっ…そうだ」
病院に着く直前に、携帯の充電が切れてしまっていたことを思い出した私は、ハッとしてすぐに携帯を充電機のコードと繋いだ。
すると数分で電源が勝手についたかと思ったら、すぐに携帯が音を鳴らした。
慌てて手に取ると、液晶画面には諒太の名前が表示されていた。
そういえば、母を探している間にも何度か電話が鳴っていた。メッセージもいくつか届いていた。
でも、落ち着いて話せるような状況じゃなかったから…母が見つかったら、ちゃんと自分から連絡しようと思っていた。
「もしもし…」
「理香子!?今どこ!?」
あまりにも大きなその声に、驚いて携帯を耳から離してしまいそうになった。
「家…だけど」
「家!?」
「うん…家、です」
「はぁっ、良かった。早退したって聞いたから体調でも悪いのかと思って。ずっと連絡してるのに、途中で電源も切れるし。何かあったんじゃないかって心配で心配で」
本当に心配してくれていたんだと、声を聞いただけでわかる。
諒太の今の表情まで、何だか目に浮かんだ。
「でも、理香子の声を聞けてやっと安心したよ」
そしてその言葉に、私もホッとしていた。
諒太の声を聞くと、安心する。
不安だった心が、少しずつ落ち着きを取り戻せていくようで。
「ねぇ…諒太」
「ん?」
「諒太に…会いたい」
思わずそう、口にしていた。