俺様外科医に求婚されました
「とりあえず、今はここまでで」
「へっ?何で」
キョトンとする諒太を見つめ、ニコリと微笑む。
「まず、ここは病院です。それにこれから仕事が…あっ、わっ!まずいタイムカード押すのギリギリだ」
腕時計を確認した私は、のんきに幸せに浸っている場合ではないと、慌てて廊下を駆け出した。
「急ぎますのでまた!」
「お!続きはたっぷりまた夜に!」
たっぷりって…何!?
諒太の言葉に思わずドキッとしながらも、私はスタッフステーションに向かって急ぐ。
「よし、セーフ!」
そしてなんとか間に合いタイムカードを押した私は、朝礼に集まる看護師達の列に並んだ。
今日も、普段通りの一日が始まっていく。
だけどこれからは、少し変化していくのかもしれない。
「ねー、脳血管科にすごい長身のイケメン先生がきたって噂だけど見た?」
「え!見てない、本当にかっこいいの?」
「らしいよ、私もまだ見てないからわからないんだけど」
朝礼終わりの賑やかなスタッフステーションで、聞き耳を立てながら私は思う。
来て早々そんな噂が立つなんて、諒太は相変わらずモテそうで困る。
でも、きっと大丈夫。
五年も会えなかったのに、諒太はずっと私を想い続けてくれていたんだ。
そしてもう一度、はじめから。
私達は、二人で歩き出したのだから。
【完】


