たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
それから数日後。
営業時間を過ぎ、来客用の食器を洗ってから営業室に戻ると、女性社員が輪になって楽しそうに話していた。その輪に近付いていくと、先輩の一人が私に振り返り、「あ、桃城さんは彼氏いる? いない?」と突然聞いていた。
「え、え? いきなりなんです?」
「彼氏いない者同士で集まって、合コンの計画立ててるの! 桃城さんも良かったらどう?」
あ、そういうことか。いきなり彼氏いるかなんて聞かれたから驚いてしまった。
「ええと、私は合コンは遠慮しておきます」
「えー! ってことは彼氏いるんだ!?」
「い、いえ。そういう訳ではなくて」
職場恋愛は基本的に禁止だから、部長と付き合っていることは職場では誰にも話していない。私は「そういう場が苦手なので」と言って誤魔化した。
すると「なになに? みんな楽しそうだね」と言って、輪に入ってくる人がいた。三期上の、花村さんという女性の先輩だ。
花村さんも彼氏はいないらしく、合コンの話には食いついたものの、
「でも私、今狙ってる男性がいるんだよね」
と口にする。
当然、その場にいた全員が、それは誰なのかと彼女に質問をする。
すると、花村さんは視線をちらっと営業室の後方に移し、
「進藤部長! かっこいいし仕事出来るし、ちょっとクールだけど優しいじゃない?」
と答えた。