たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
翌朝。

いつも通りの時間に出勤すると、営業室に入ってすぐ、部長と擦れ違う。


「おはようございます」

明るく挨拶をしたつもりだったけれど……部長は何故か怖い顔で私を睨み、「……ああ」と返すのみで、そのまま廊下に出て行った。


え? 何? どうして怒っているの?


自分の言動を必死に思い返すけれど、原因が分からない。


でも何かしてしまったのなら謝りたい。私はすぐに振り返って廊下に出る。


「あの、部ちょ――」

「あ、部長!」

だけど私が声を掛けるよりも先に、営業課の男性社員が部長に話し掛けてしまった。


「予備はありましたか?」

「いや、見つからない」


予備? よく分からないけれど仕事の話だろう。それなら、私とのことは後にした方がいい……。そう思い、いったんは気持ちを切り替えて営業室に戻るけれど、どうしても部長の怖い顔が頭から離れず、仕事に集中出来なかった。
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