たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「驚いたか?」

バラの向こうから顔を出したのは部長だった。口角を釣り上げて楽しそうに笑っている。


「え、え?」

訳が分からず、私は間抜けな声を出すことしか出来ない。おそらく顔も、これ以上ないというくらいに間抜けな表情をしているだろう。


「寝てたか? それなら悪い。いつも日付が変わるまでは起きてると聞いていたから」

「えと、寝てはいなかったのでそれは大丈夫なんですが、え、え?」

「誕生日だろ」

そこでようやくハッとする。そうだ、二十四時を回っているから、既に日付は私の誕生日に変わっている。

ということは……これは私への誕生日プレゼント?


「……気に入らなかったか?」

何も答えない私に部長が首を傾げてそう尋ねてくるから、私は慌てて「いえ! そうではないです!」と答えた。


「それなら良かった。とりあえず中に入っていいか?」

そう言われ、私も部長をすっかり立ち話させてしまっていることにようやく気付き、これまた慌てて部屋の中へと促した。もちろん、差し出される綺麗なバラの花束を受け取ってから。
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