たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
電気を点け、明るくなった部屋に彼を通す。私がバラの花束を花瓶に生けている間に、彼には適当に座っていてもらっていた。
花瓶に生けたバラ達も、とっても綺麗。好きな人に誕生日プレゼントでバラをもらえるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう……って。
「怒っていたんじゃないんですか?」
部屋に戻った私は、彼の隣に腰をおろしながらその質問をぶつけた。あの表情、絶対に私に対して怒っていた。だって睨んできたのだ。挨拶だって返してくれなかった。
それなのに彼は、
「怒る? 誰が誰に?」
ときょとん顔だ。どういうこと? 私は部長をどうして怒らせてしまったのか一日中悩んでいたのに。
「……あ」
不意に、部長が何かを思い出したような声をあげる。
「悪い。もしかして今朝のことか?」
彼にも思い当たる節はあったようだ。私は素直に「そうです。睨んできましたよね」と返す。
すると。
「違うんだ。今朝営業室で、うっかりコンタクトレンズを落としたんだ」
「え?」
「目を細めていないと何も見えないんだ。擦れ違った人が誰なのかも分からない」
……嘘。じゃああれは睨まれていた訳じゃなくて、相手を識別するために目を細めていただけ?
「じゃあ挨拶を返してくれなかったのは……」
「悪い。目をこらすのに集中しすぎていた。予備のレンズがロッカーにあったと思ったんだが、それも見つからなくてな」
予備? あ、じゃあ営業の先輩と話していた『予備はありましたか?』『いや、見つからない』っていうのは、コンタクトレンズのことだったの?
花瓶に生けたバラ達も、とっても綺麗。好きな人に誕生日プレゼントでバラをもらえるなんて、私はなんて幸せ者なんだろう……って。
「怒っていたんじゃないんですか?」
部屋に戻った私は、彼の隣に腰をおろしながらその質問をぶつけた。あの表情、絶対に私に対して怒っていた。だって睨んできたのだ。挨拶だって返してくれなかった。
それなのに彼は、
「怒る? 誰が誰に?」
ときょとん顔だ。どういうこと? 私は部長をどうして怒らせてしまったのか一日中悩んでいたのに。
「……あ」
不意に、部長が何かを思い出したような声をあげる。
「悪い。もしかして今朝のことか?」
彼にも思い当たる節はあったようだ。私は素直に「そうです。睨んできましたよね」と返す。
すると。
「違うんだ。今朝営業室で、うっかりコンタクトレンズを落としたんだ」
「え?」
「目を細めていないと何も見えないんだ。擦れ違った人が誰なのかも分からない」
……嘘。じゃああれは睨まれていた訳じゃなくて、相手を識別するために目を細めていただけ?
「じゃあ挨拶を返してくれなかったのは……」
「悪い。目をこらすのに集中しすぎていた。予備のレンズがロッカーにあったと思ったんだが、それも見つからなくてな」
予備? あ、じゃあ営業の先輩と話していた『予備はありましたか?』『いや、見つからない』っていうのは、コンタクトレンズのことだったの?