たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「じゃあ、花村さんのことは……?」

今度はその件について触れると、「花村が何だ?」なんて返してくる。これは、彼女のことについても誤解があるようだ。
私は、花村さんが部長に呼び出されたと喜んで話していたことを彼に伝えた。すると。


「女性が誕生日にもらって嬉しいものは何か聞いただけだよ。花村は、綾菜と年齢が近いから参考になるかと思って」

え……そういうこと? やっぱり勘違いだったの? それどころか、部長は私の誕生日のことを考えてくれていた……。



「でも、よく知っていましたね、私の誕生日」

「社員証見れば分かるだろ」

「まあ、確かに」

「知らないフリして驚かせたかったっていうのもあるけどな」

そう言って彼はいたずらっぽく笑う。ああ、この表情、ほんとに好きだなぁ。きっと社内では私しか知らない、彼の特別な笑顔。


「でも、プレゼントはこれだけじゃない」

「え?」

首を傾げる私の目の前に、彼は長方形の小さな箱を差し出す。


これって……もしかして。


「お前は結婚なんてまだ考えられないと言っていたが、お前を幸せにするのはこの世で俺だけだと決まっている。それなら、結婚なんていつしても同じだ」

強引で無茶苦茶なことを言いながらも、私は感動で胸がきゅっと締め付けられる。
箱から姿を現したのは、キラキラと眩しく輝くエンゲージリング。
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