自由帳【番外編やおまけたち】
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〝北村様へ〟

「ん?」


ようやく梅雨明けとなった暑い日のこと。
出社後簡単にメールチェックをしていたら、名指しでメールが届いていた。


「あれ……佐々岡さんからだっ」


声に出してしまい、慌てて辺りを見渡す。幸い、周りの席の営業たちは皆出かけているようだった。
はやる気持ちを抑えてクリックする。思わずトリプルクリックくらいしてしまった。



実は先日、初めて佐々岡さんへメールを送ってみたのだ。

さすがに電話は申し訳ないと思い、メールにした。彼にとっては業務対象外であろう、本当に大したことのない質問をするために。

口では冷たく突き放すようなことを平気で言うくせに、とても本人とは思えない親切なメールが返ってきた。わざわざマニュアル抜粋の添付ファイルまで付けてくれたりして。
驚いて何度も差出人を確認してしまった。

もしかして、うちの社員全員に回覧されるとでも思っているのだろうか。


ーー佐々岡さん、猫かぶりすごいからなあ。


作業着姿の爽やかな〝仮の姿〟を思い浮かべ、思わず笑ってしまった。そうしたら、無性に会いたくなってしまって。



(もしかして、この前の質問にまだ何か補足回答があった、とか……?)


パッと表示された画面が明らかに別件だと気付いたのは、数行読んでからだった。


〝ようやく梅雨も明けました。湿気が多い時期は紙詰まりしやすいですが、先日納品致しましたプリンターの調子はいかがでしょうか〟


事務的な文面だ。
出来ればプリンターではなく私のことも少しは気にして欲しい。


(っとと、私、今一体何を考えて……)


先日のやり取りで幾らか惚けている自分の思考に驚きながら、まずはメールだと続きを読み進める。

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