自由帳【番外編やおまけたち】

「何だよ佐々岡、担当のお客様だろ? すみませんね、ご存知かもしれませんがコイツこういう人間でして」

「あ、はは」


聞けば寺内さんと佐々岡さんは、同期入社だという。部署は違うものの、気安さが感じられ仲は良さそうに思える。
主に寺内さんが話題を提供してくれて、私がそれに答える。佐々岡さんは時折相槌を打ってはくれたが、ほとんど黙ったまま私たちの会話を聞いていた。


「寺内さーん! 担当のお客様が見えてる!」


やがて呼びに来た社員を見て、寺内さんは腰を上げた。


「はいはーい! ……じゃあ俺、そろそろ持ち場に戻るわ。北村さん、またね」

「あ、はい。どうもありがとうございました」

「……ほとんど口を付けてないから、佐々岡にやる。これなら飲むだろ?」


手元のジョッキを佐々岡さんの方へスライドしながら、そう言えば、と寺内さんはニヤリと顔を上げた。


「あの佐々岡が休み返上してまで熱心に通ってる客先がある、とか聞いたことがあったけど、北村さん知ってます?」

「え?」

「いくら何でも普通は代わりの人を出すと思うんですけどね、一体どういった心境なのか」

「ーーああもう、早くあっち行けよ!」

「ハイハイ」


休みを返上してまでーー。

確かに以前そのようなやり取りをしたこともあったが、まさか。
いやいや、たまたま代われる人がいなかったはずだ。確かプリンターが古過ぎて他に分かる人がいないとか言ってたし。あんな態度から熱心に通ってたとも到底思えないし!
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